『呪怨 白い老女』のおぞましさ

先週、DVDを借りて見た。クロユリ団地を見に行く前だった。

本作の三宅隆太監督は、俺にとっては「よく宇多丸のラジオに出てくる人(エエ声)」という存在でしかなかったのだが、「クロユリ団地」の脚本参加を知り、いい機会だと重い腰を上げてみた次第である。

見終わって、本気で二度と見たくないと思った。特に、ラストの一家惨殺とみひろの章がおぞましかった。「怖い」ではない。

この2場面で共通に描かれているのは、「霊に狂わされて、愛する人や大切に思っている人を自ら殺めてしまう」という恐怖だ。この恐怖は、いわゆるJホラーでよく描かれるそれとはだいぶ違うのではないかと思う。

Jホラー映画の恐怖とは、「被害者になる」恐怖だ。普通に暮らしている普通の人たちが、たいした理由もなく霊に襲われ、不幸になる。

これに対して、この2場面では「加害者になる」恐怖が描かれていると思った。特にそれが顕著なのがラストの一家惨殺(篤でしたっけ?の章)だ。

この章で霊がしたことといえば、主役の青年のタガをはずすことだけ。そして、彼がもともと内に秘めていた暗い願望が顕在化し、家族の全員を殺してしまう。(※この章の主役である篤は、司法試験に何度も落ち続けている浪人生で、そのことにより家族から馬鹿にされている。さらに、小学生の義理の妹に対し少々アブナイ好意を抱いている。と思われる。)

最初の嫌悪感を感じた理由にもどる。たぶん、オレは無意識的に「これが自分の身に起きたら」ということを考えながら見ていたのだと思う。で、「なんておぞましい!」となったのだろう。自分の内に秘めていた暗い願望が抑えられなくなり噴出、そのせいで他人に大迷惑をかける。......超怖えぇよ!幽霊に殺されるほうがまだマシだ!